オフザシェルフのステレオカメラ
画像処理といえば今や openCV と 1000円の USB カメラだけで始められる参入障害の低い分野のひとつで、カメラも星の数ほど種類がありますが、これがステレオカメラになるとぐっと選択肢が減ってしまいます。もちろんカメラを二台並べて自作すればいいのですが、カメラ間のシャッター同期やキャリブレーションの手間を考えると、既成のカメラがほしくなってきます。
そこで、ネットで見つけた数少ないステレオカメラをリストにまとめました。
計算量の大きなステレオマッチングをカメラ内臓のASICで実行してくれる製品も何個かあります。ロボティクス系の研究であればポイントクラウドだけ出力してくれるのがいいだろうけれど、画像処理系の研究では自分でいじりたい部分もあると思われるので、一概に必須とも言い切れないか。
- Point Grey Bumblebee
- ロボティクス研究における定番機種。少なくとも日本国内ではビュープラスが代理店をしていることもあり、文献でよく見かける気がします。不満をあげるなら、IEEE1394(Firewire)は最近少し見かけなくなってきたか。IEEE1394はプロトコル自体に同期の仕組みがあるから、便利なんですけどね。ちなみにステレオ処理はPC側で実行してやる必要があります。
- Matrix Vision mvBlueSIRIUS
- この会社は日本に代理店がないのかな?1024 x 1024 30Hz で視差計算をカメラ側でやってくれるのはすごい。4眼なのが変わっていますね。インターフェースは GigE Vision。プレゼン資料でも謳っている、セルフキャリブレーション機能が気になる・・・。
- Carnegie Robotics MultiSense
- DARPA Robotics Challenge でも採用された実績があるカメラ。セミグローバルマッチングをカメラ側で解いてくれる上、いかにも頑丈そうな筐体が魅力的。ただお値段はいくらぐらいするんでしょうか・・・。
- iDS Ensenso
- 赤外線プロジェクションなので屋外では使えず、主に食品などの工場用ですが、面白い試みです。
さすがに生産ラインで Kinnect というわけにも行かないでしょうから…。 - TYZX
- Google画像検索でたまたま引っかかったスタートアップ。WVGA解像度でベースライン 33cm / 55cm、アイサイトみたいな日よけつきなのでもっとも自動車用を意識していたように思うのですが、どうやらめでたくインテルに買収されてみたいですね。
現実にはどれも使ったことがないので、最も重要な値段や使い勝手については不明です…。
そのほかの手段としては、何とかして販売中止になったFinePix REAL 3D W3Mが手に入らなくはないほか、DS-3DW300というカメラもあるみたいですが。
スタートアップの始め方
独立するつもりは全くありませんが、研究とは世にないものを生み出す開拓者精神そのもの。
というわけで「ハッカーと画家」で有名なポール・グレアム氏のスタンフォード大学での講演です。
英語字幕付きなので、英語の勉強になります。
こちらに邦訳してらっしゃる方がいます。
最近何をしているのかな、と思ったら、ベンチャーキャピタルの Y Combinator は Dropbox や Airbnb を生むなど、盛況のようですね。
OpenCVとDaimler Pedestrian Detection Datasetによる歩行者検知
OpenCVには HOG+SVM を用いた人検出器が含まれていますが、あまり小さな歩行者を検出することができません。 これは学習データが64x128画素のためのようです。
OpenCV 備忘録: OpenCVでHOG特徴量+SVMで人物検出を行う 1
あとドキュメント化されていないようだが、getDefaultPeopleDetectorの辞書に登録されている画像データのサイズは64x128画素であり、この大きさより、小さい人物を検出したい場合は、対象の画像を拡大しないといけない。
一方、あまり使われていませんが、実はOPENCVにはもう一つ検出器が同梱されています。 この検出器はDaimler Pedestrian Detection Benchmark Dataset の48x96画素データで学習されているため、INRIA Person Datasetによる標準の検出器よりも小さなサイズを検出できます。
そこで、以下のサイトから借用したコードを改造してみました。
# -*- coding: utf-8 -*- import cv2 if __name__ == '__main__': # 画像の読み込み im = cv2.imread("test.jpg") # HoG特徴量の計算 #hog = cv2.HOGDescriptor() hog = cv2.HOGDescriptor((48,96), (16,16), (8,8), (8,8), 9) # SVMによる人検出 #hog.setSVMDetector(cv2.HOGDescriptor_getDefaultPeopleDetector()) hog.setSVMDetector(cv2.HOGDescriptor_getDaimlerPeopleDetector()) hogParams = {'winStride': (8, 8), 'padding': (32, 32), 'scale': 1.05} # 人を検出した座標 human, r = hog.detectMultiScale(im, **hogParams) # 長方形で人を囲う for (x, y, w, h) in human: cv2.rectangle(im, (x, y),(x+w, y+h),(0,50,255), 3) # 人を検出した座標 cv2.imshow("Human detection",im) cv2.waitKey(0) # 画像保存 cv2.imwrite('test2.jpg',im) cv2.destroyAllWindows()
実行結果 標準(INRIA)
Daimler
余計なものも一緒に検出されるようになってしましましたが、取り敢えず動いています。
スズキ・スペーシア ステレオカメラ方式の衝突警報を採用
スズキ・スペーシアの新モデルでは、ステレオカメラ方式の衝突被害軽減システム「デュアルカメラブレーキサポート」がオプション提供されるようです。
ステレオカメラ方式の自動ブレーキは軽自動車初、乗用車全体でもスバル、ダイムラー、レクサスに次ぐ4番目となります。
Car Watch によると価格は75,000円なので、アイサイトよりも少し安い。ステレオカメラは原価的に有利と思われていた時期もありましたが、相次ぐ各社のミリ波レーダー採用で、徐々にその差は縮まっています。実際にスズキはすでにソリオで「レーダーブレーキサポートII」としてミリ波レーザーによるシステムを提供しています。今回あえてステレオカメラを追加したのは、原価というよりも性能の向上を見込んでのことと思われます。
最初、レーダーブレーキサポートIIのように、80km/hまで警報、30km/hまで自動ブレーキのような、複数段階の速度域を持つのかと思いましたが、以下の動画の書き方では 100km/h まで制動をかけるようですね。
ちなみにアイサイトの場合、以下の表現を使っています。
対象物との速度差が、30km/h以内(ver.2)、50km/h以内(ver.3)であれば衝突回避。もしくは被害軽減。それ以上の速度差でも被害の軽減を行います。
カメラの仕様については詳細がわかりませんが、ベースラインが20cmという情報もあります。
ライバルメーカーにとって“驚異”となるスズキの新しい自動ブレーキ『デュアルカメラブレーキサポート』【コラム】 【オートックワン】
さて、カタログスペックはわかりましたが、気になるのは今後 JNCAP の結果がどうなるかです。ソリオの場合、静止車両して時速80km/hまでの作動を謳っていますが、FCW試験では 45km/h までしか検知できていません。もちろんシステムの作動速度範囲内だからといって、確実な検知が保証されているわけではありません。しかし実際問題、JNAPの対象車両中唯一、ミリ波レーダーを採用していながら ASV+ を獲得できていない、という不名誉な結果になっています。(ソリオより点数の低い車両はすべてレーザーレーダー。)
レーダーブレーキサポートIIの性能に満足できなかったから今回のステレオカメラ採用に踏み切ったのか、それともカタログ値と実力がかい離しがちなメーカーなのか。とにかく結果を見守ります。
2015/05/27追記: カメラは日立オートモーティブズ製との記事がありました。アイサイトと同じですね。
日経Robotics 創刊!だけど…
年間購読料金48,600円は高くないですか?日経が出しているとはいえ、あまり部数が見込めないんでしょうね…。最初から法人契約のみを狙っているというか。ただでさえ「積ん読」が増えてるから、パスだろうなぁ。
ところで、「つんどく」って一発変換できるんですね。恐るべし。
Google Car と LIDAR の未来は?
自動走行の中でも最も重要な技術の一つが、車両の目となる三次元計測センサーです。近年の自動走行ブームの先駆けとなった DARPA Ground Challenge では、ほとんどの参加チームが Velodyne 製レーザーレーダー (LIDAR)を使用していましたが、このデバイスは $70,000 と途方もなく高価で、車両本体よりもはるかに高い価格のために、自動走行の商用化にあたっての大きな課題と目されています。
Google-car でさえもこの Velodyne 製LIDARを使用していたのですが、IEEE Spectrum によると、今年頭に発表された新型車両では、なんと自社開発の LIDAR を搭載しだしたそうです。The New yorker はこの価格を $10,000 と報じていますが、Google がこの価格で LIDAR を大量に他社供給するようなビジネスを行うとは思えませんので、これは量産にこぎつけられた場合の話でしょう。
一方の Velodyne は64層から16層に減らした廉価版 VLP-16 を $8,000 で販売し始めました。
そのほかには Valeo が $1,000 で使えるレーダーを2016年に完成させようと狙っていますが、遅れ気味のようですのでどうなることやら。
大本命は SICK や HOKUYO などの工業向けにすでにレーザースキャナーを供給している企業です。彼らは広報せずとも自動車業界からアプローチが来るのか、外からあまり動きが見えません…。
いずれにせよ成長が見込まれる市場ですので、これからもコニカミノルタのような参入し、どんどん価格を競ってほしい、とユーザーサイドからは切に願います。
Toyota Safety Sense C
少し前の記事になりますが。もともとトヨタは衝突被害軽減ブレーキの導入にはかなり慎重で、ラインナップはレクサス等高級車に限られていました。
しかしさすがに昨今のマーケットの要求を無視できなくなったのか、昨年末にやっと単眼カメラ+レーザーレーダーの小型車向けのパッケージ "Toyota Safety Sense C" を発表していました。
眠れる巨人状態だったトヨタのシステムがどんな性能なのか気になっていましたが、この度無事JNCAPで満点を取得することが出来たようです。
トヨタの単眼カメラもMOBILEYEなんでしょうか?気になるところです。